弁護士の仕事はAIに奪われるのか?【ChatGPTの回答も紹介】

先日、弁護士業務の文書管理サービス「llamadrive」の創業者の方とお話する機会をいただきました。
創業者は元々法律業界の方ではなく、AI分野を専門とされる方。
そういったAIの最前線の方が、弁護士業務をどう見ているかという話は非常に興味深かったです。
僕がなんとなく思っていたことが、「やっぱりそうか!」と思う部分もありましたし、新たな発見も多くありました。
その上で、「AIの発達により弁護士業務は奪われるか?」について僕なりの考えをまとめました。
おそらくもっと専門的な方が散々議論されていると思いますが、いちマチ弁としての感覚も交えつつまとめました。
AIによって弁護士の仕事は奪われるのか?
結論を先に言うと、AIによって弁護士の仕事が奪われる(なくなる)ことは99.9%ありません。
「奪われる派」は、「法律や判例の知識はAIに勝てない。AIであれば膨大な知識を前提に回答できるし、文書作成もできる」といったことを根拠に挙げます。
しかし「奪われる」という主張は、弁護士業務をあまりに単純化しています。
たしかに弁護士の仕事が、ただ法律相談を受けて、法律通りの回答をする仕事、つまり知識をアウトプットするだけの仕事であれば、AIによって奪われます(知識量では人間はAIに勝てないから)
しかし弁護士の仕事は、そんな単純なものではありません。
たとえば、
- 相談者・依頼者から事実や要望を聞き取る
- 相談者・依頼者の悩みや苦しみに寄り添う
- 適切な主張立証を行う(証拠関係は事件によって違う)
- 相手方と交渉する、調停や和解に臨む
- 依頼者の納得を得る、依頼者と信頼関係を築く
- 文章にしても正論を書くだけでなく、様々なことを考えて書く必要がある
こういったことは、AIでは不可能(または極めて困難)です。
また、弁護士業務には国家資格が必要ですから、制度(法律)の問題もあります。
万が一AIが弁護士の仕事を代替する能力を持ったとしても、制度(法律)的にAIに弁護士業務を行わせることは、少なくとも我々が生きている間はないでしょう。
ですから、AIによって弁護士の仕事が奪われる(なくなる)ことは99.9%ありません。
ChatGPTにも聞いてみた
ChatGPTの回答は下記のとおりでした。
結論
AIの発達によって、日本の弁護士の仕事が完全になくなることはない。しかし、一部の業務はAIに代替され、弁護士の役割は変化していく。
理由1:ルーティン業務の自動化
AIは契約書の作成、法令リサーチ、判例検索、文書レビューなどのルーティン業務を効率化する。これにより、弁護士がこれらの作業に割く時間は減るが、完全になくなるわけではない。
理由2:AIが苦手な交渉・判断業務の存在
法律問題は、単なる情報処理ではなく、交渉や裁判での戦略的判断、依頼者との信頼関係の構築が不可欠。AIが法的助言をすることは可能でも、依頼者の感情や複雑な利害関係を考慮しながら最適な解決策を導き出すのは弁護士の役割として残る。
理由3:法的責任と倫理の問題
法律業務には倫理や法的責任が伴う。AIが誤った判断をした場合の責任の所在が不明確であり、弁護士が最終的な判断を下す必要がある。AIが完全に取って代わるには、法的な枠組みが整備される必要があり、実現には時間がかかる。
結論(まとめ)
AIは弁護士業務の一部を代替するが、完全に置き換えることはできない。むしろ、弁護士はAIを活用しながら、より高度な業務や依頼者対応に注力することで、新たな価値を生み出す必要がある。
以上のとおり、「日本の弁護士の仕事が完全になくなることはない」と明言しています。
しかし、「なくなるかどうか」という話と、「影響を受けるか」「どのような影響を受けるか」という話は別です。
変化は必ず起こる
ChatGPTの回答でも指摘されているとおり、「AIは弁護士業務の一部を代替する」ということは(程度の問題こそあれ)当然起こります(すでに一部起きています)
そしてさらに重要なのは、「弁護士はAIを活用しながら、より高度な業務や依頼者対応に注力することで、新たな価値を生み出す必要がある」という部分。
しかも興味深いのは、「必要がある」というところです。
「AIを使うと便利になりますよ」ではなく「必要がある」と言っています。
ここは本当にそう思います。
AIの発達によって、少なくとも僕が弁護士になった2007年以降で一番大きな変化が起こるのは間違いないと思っています。
それは、手書きがワープロになりパソコンになった、郵便がメールになった、携帯電話が登場しスマホが出た、そのレベルを遥かに超える、産業革命に近い変化が起こると思います。
もちろん、AIを使わなくても弁護士業は続けられるはずです。
ただ、AIを使いこなす弁護士とそうでない弁護士の差は、大きく開くと思います。
その「差」というのは、売上・依頼数・労働時間という数値化できるものかもしれませんし、効率・幸福度・ストレス・スピードという(簡単には)数値化できないものかもしれません。
とはいえ、弁護士業界全体の変化は、正直それほど早く進まないと思います。
今日・明日なにか困るとか、付いていけなくなることは考えられません。
ただ、AIの状況にアンテナを張り、拒絶せず、なにか使える部分がないかと意識することは非常に重要ではないかと思います。
AIによって弁護士業務がどう変わるかという、もう少し具体的な話は改めて書きたいと思います。